3月26日(振り返り)

「もう一度名古屋に帰ってきてあたしと一緒に仕事をしない?」
 葵ちゃんからの突然の誘いに言葉が出なかった。


「今、あたしと現場との間には大きな壁がある。経営にも現場にも理解の深い英奈に戻ってきて欲しいの。それなりのポストは用意するわ。副社長と言うことでどうかしら。」


 葵ちゃんは気前がいいからかなりのお給料も用意してくれるだろう。でも、お金のことなんかよりわたしを必要としてくれることがなにより嬉しかった。


 だけどわたしは仕事より相方と一緒にいることを優先して2年前に退社したのだ。病気の相方をひとりきりにすることなんて考えられない。


「申し訳ないけど、少し時間をくれるかな。」


葵ちゃんはそういうわたしを笑顔で見送ってくれた。

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