2月13日

 特になにも考えなくてもキャラクターが勝手に動き出す。相方はそんなことを言っていたがそんなことあり得るのか?
 わたしの中の姫奈は身動きひとつしないぞ。なにも喋らないぞ。相方が嘘をついているのか?いや、あの人は女が絡まない限り嘘はつかない。女が絡めば必ず嘘をつくけど。
 そうか。わたしの頭の中で姫奈のイメージがしっかり出来ていないから姫奈は動き出さないんだ。わたしの中で姫奈が動き出す為にはまだまだ姫奈が赤ん坊だからだ。


 そう言えば、相方が作った姫奈のイメージというものがあったな。姫奈の文章というものの解釈の仕方が設定されていたっけ。もう一度、それを読み直して少しでも姫奈のイメージを膨らませよう。


○姫奈の文章に対する考え方


 わたしの好きな文章はね。綺麗で、かつ生々しい文章なの。綺麗な文章というのは論理的で、無駄がなく、美しい言葉を使って、分かりやすい比喩表現を使った文章のことかな。他にも綺麗な文章を作る要素は色々あるけど例えばそんな文章のこと。生々しい文章というのは登場人物や語り手の感じていることが伝わってくるような文章のことよ。もちろん作者の感情や思想が詰め込まれたものが一層好きだわ。
 でも、大切なのはそのバランスなの。いくら綺麗な文章でも川の流れのように目の前を通り過ぎていくだけの文章は好きじゃない。読みやすい文章でも読んでいてストレスを感じない文章には惹かれない。ストレスを感じることを好むのなんておかしいことかしら。そんなことはないわ。ストレスを感じるからその文章に夢中になることが出来るの。不満を感じるから燃えてくるの。
 だけど、生々しくてストレスだらけで感情的になるばかりの文章も嫌ね。感情移入をし過ぎるわたしをどこかで現実に引き戻して欲しいと感じるの。ストーリーやキャラクターにのめり込み過ぎてしまったわたしを一気に冷却させてくれるような文章が望ましいわ。
 文章の中の世界とこの世をなんども往復させてくれるような文章を読んでいるときが一番気持ちがいい。物語がわたしを深い海の中に連れて行ってくれるのだけど、息が詰まって死んでしまう前に強い力で水面まで引き上げてくれるような文章。わたしをなんども苦しさと快楽の往復をさせてくれる文章。そんなのがわたしの好みの文章ね。
 だから、わたしは初めてページを捲った本を一息で読んでしまうという文章はあまり好きではない。何度も何度も息継ぎをしながら、何度も堕ちて行く感覚を味わいたいの。
※相方のメモから抜粋。


なんだこいつ。19歳のくせにこんなこと考えているのか。考えるのはいいけど、普通こんなに自分の見識をはっきりさせて、言葉に出来るやつなんていやしないぞ。こんな19歳いるか?ちょっと設定に無理があるんじゃないの?


「あり得ない人物でも自由に造りだせるから小説なんだろ。」


 はいはい。相方の言う通りですよ。分かりましたよ。
 わたしはこんな女の欲やら性を語らなくてはならないのか。しんどい。
 分かったことと言えば姫奈はドMだということくらいか。海の中に沈められたり、引き揚げられたりを繰り返すことを気持ちいいと感じる変態だということか。


 しんどいけど、面白そうな作業ではある。わたしの妄想力をフル回転させてひとりの女を生み出すというのは気持ちのいい行為のような気もする。


 取り敢えず昼ごはん食べようよ。わたしが作ってあげるから。そしたら、たまには昼からSEXでもしない?なんとなく姫奈に近付けるような気がするからさ。

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