2月10日

 何気なく。本当に何気なく本棚を整理していたらすごく懐かしいCDが出て来た。
わたしがまだ小学生低学年の頃に、自分のお小遣いで初めて買ったCDではないだろうか。もう、このCDも発売直後というわけでもなく、チャートの中にも入っていなかったと記憶している。
 チャートには入っていなくても、わたしの頭と心の中にしっかりと刻み込まれている是非とも手にしたい憧れのCDだった。
 わたしはこの人の書く歌詞が大好きだった。10歳にも満たない子供には似つかわしくない大人っぽい歌詞だったけど、なんだか親近感が湧いた。遠い世界のおとぎ話ではなくて、いつか自分が大人になったらこんなことを考えるのかなと想像させるような親しみやすい歌詞だった。だからこそ、大人っぽい歌詞の曲を聴いているのだというちょっと背伸びをしたような気分にさせられた。


 今は、CDを買っても歌詞カードなんて読まない。というかそもそも歌詞カードなんて付いていないCDばかりを買っている。洋楽ばかり聴くようになってしまったからね。歌詞なんていらないんだ。激しく動きまわるドラムスの上にメロディアスなベースと神経に触るような尖ったギターが乗って、突き抜けるような高音のボーカルがあれば、それで満足だ。なにを言っているのか分からない、そもそもそれを聞きとろうとしなくてもいいくらいで丁度いいのだ。


 だけど、この女性の書く歌詞は必死で目と耳で追いかけた。多分、この人の声でこの歌詞を歌うのだからこんなに聞いていて気持ちがよかったのだろう。歌詞だけでなく、声も大好きだった。綺麗な声だけど、高音部は少しだけ鼻にかかる音が絶妙に色っぽかった。
わたしの中の理想の女性というのは、当時間違いなく坂井 泉水さんだった。


 あまりTVなんかには露出しない人だったけど、美しい女性だった。可憐で、物静かで、儚げで。これが女なんだと思った。


 亡くなったと聞いたときは本当にショックだった。何度か命日に献花しに行った。今でもわたしの中に歌声は残っているし、歌を歌う美しい姿も焼き付いています。今でも、あなたの作る世界の中に出てくる女性のようになりたいと願い続けています。そう報告をする為に。


 亡くなったときの年齢は確か40歳だったと思う。いつかわたしもあなたより年上の女になるだろう。そのときにどれだけ女というものの極みに近付けているだろうか。


 大きな寄り道もしたけど、スタートしたときからずっとゴールに見えるあなたを見失ったことはありません。


 女として美しくなりたいという夢を与えて頂きありがとうございました。

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