1月12日

 どうにもテンションが上がらない。憂鬱感は日増しに大きくなっているようだ。いけない。そろそろコラムも書き始めないと。
 
「平成という時代を振り返る」と見出しだけ書き込んだパソコンの画面をじっと見つめながらどんな記事を書こうか頭を出来る限りフル回転させる。
 ネットで平成に起こった色々な事件を調べてみたけど、色々と大きな事件の多い時代だったんだなあと思い知らされた。オウム真理教関連の事件、9・11のテロ事件、東日本大震災、サカキバラセイト事件。本当にたくさんの事件があったのだけど、なんだか自分とはあまり係わりのない事件だという気がしてならない。これが風化というものではないだろうか。事件や災害を忘れないことが大切だ、そのことが新しい事件や災害を防ぐ一番大事な予防策だなんていうけれど、果たして本当にそうなのだろうか。警察関係者なんかにはそれが当てはまるかもしれない。過去の事件を参考にして、それを予防する仕組みつくりとか組織つくりをすることは有意義なことかもしれない。でも、わたし達一般人はいったいなにが出来るというのだろう。
 
 どうにも、平成に起きた事件だけを調べても平成という時代を語ることは出来ないような気がしてきた。事件や災害を振り返って、いや本当に激動の時代でしたね。なんて、つまらないことは書きたくないし。
 
 そうだ。いっそのこと芸能とか文化とかに的を絞ってみたらどうだろう。ときどき歌番組なんかで昭和の名曲と平成の名曲を比べる番組なんかをやっている。聞き比べてみれば確かに全然違う。流行とかその時代に受け入れられやすい曲の感じとか色々あるのだろう。平成にバカ売れした曲が昭和の時代でもそんなに売れたとも思えない。だけど、昭和の名曲は平成にリリースされたとしても、ある程度売れたのではないかと思う。神田川とかルビーの指環なんかは、餓鬼のわたしが聞いてもいい曲だなあと思う。いや、違うな。いい歌だなあと思うんだ。曲という視点で見てみれば絶対に今の音楽の方がクオリティは高いと思う。低い曲もあるけど。


 うん。なんだか方向性が見えてきた。わたしも音楽は好きだからこれなら気持ちのこもった面白い文章が書けるのではないだろうか。わたしの小さな脳に入りきらない程名曲というものはたくさんある。まずは昭和と平成のヒット曲の中でわたしの好きな曲をリストアップしてみようと思う。


「平成の一番の名曲ってなんだと思う?」
 一応相方の意見も参考にしてみよう。わたしだけの好みでリストを作っても大分偏ったものになってしまうだろうから。
 相方は迷うような素振りも見せずに歌を口ずさんだ。
「優しさに触れることよりふりまくことで ずっとずっと今までやってきた それでも損したなんて 思ってないから今夜も何とか自分で自分を守れ」
 あ~。なんだっけその歌。知っているはずなんだけど曲名も歌っている歌手も思い出せない。
「流れる景色を必ず毎晩見ている うちに帰ったらひたすら眠るだけだから ほんのひと時でも自分がどれだけやったか 窓に映ってる素顔をほめろ」


 思い出した。マジか。あんたマジで平成の1曲にその曲を選ぶのか。いや、いい曲だとは思うよ。馬鹿みたいに売れたしね。だからと言ってもね。他にもあるじゃん。平成と言えば、みたいな曲が。
「じゃあ、例えばなに?」
 そう尋ねる相方に返事が出来ない。あれ?安室ちゃんとかさ、あゆとかさ、ミスチルとかさ。アーティストの名前はいくらでも出てくるのだけど曲名が出てこない。
 マジか。平成を代表する1曲はゴリラ顔の暴君が歌うあの曲なのか。
 音楽とは恐ろしい世界だ。どれだけ心血を注いでも、ゴリラに勝てないこともある厳しい世界なのだ。


 今一度、ゴリラの歌う名曲をYoutubeで見てみた。確かにいい曲だ。なんだか目頭が熱くなるくらいに。他のゴリラの曲も聞いてみたいとは思ったけど、Youtubeに出てくる関連動画にはおっさんがケツをしばかれている動画ばかりだった。


 やっぱり平成という時代はどこかが狂っている。

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