1月13日

 平成という時代を振り返る為に、平成に売れたCDを借りようとレンタルショップに行ってきた。借りたいなと思う曲はある程度絞ってある。出来る限り絞り込んだつもりだが、その数は20曲をゆうに超えた。もちろんその中にはゴリラが歌うあの曲も入っている。
 レンタルショップに着いた途端自分の浅はかさに気付かされた。レンタルショップにはアルバムしか並んでいないのだ。考えてみれば当たり前の話だろう。シングルCDを全部並べていては、店の棚がいくら大きくても全部並べることは出来やしない。しかし、わたしは聞きたいと思っている曲のタイトルしか頭に入れてきていない。その曲がなんていうアルバムに収録されているのかなんてことはまるで分かっていないのだ。しかも、ゴリラに至ってはおそらくアルバムすらも出していないだろう。ノリと企画で曲を出しているのだろうからアルバムなんて存在しないのだ。仕方ない。あの曲はYoutubeで何度も聞き返すしかないだろう。


 ダメだ。わたしの聞きたい曲を探し出すことがこんなに労力を使うものだとは思っていなかった。わたしは実はあまり邦楽には詳しくない。どの曲がいつ頃リリースされてなんていうアルバムに収録されているのかなんてまるで知らないのだ。もう諦めよう。ゴリラの曲に限らず、聞きたい曲は全てYoutubeで探して聞くことにしよう。
 背中を丸めてすごすごとレンタルショップを後にした。


 部屋に戻ってから、Youtubeの動画をダウンロードしまくる。いい曲ばかり聞いているとこちらのテンションもどんどん上がってくる。それに比例してパソコンの音量もデカくなってくる。最初は相方に怒られるんじゃないかなと心配していたけど、相方もノリノリで聞いているようなので特に音量については配慮する必要はなくなった。
 
 むしろ、こっちが配慮してもらいたいくらいだ。相方はテンションが上がりまくってパソコンから流れる音量以上の声で歌い続ける。よく、そんなに色々な曲が歌えるもんだねと感心するくらいに。
 相方の歌い方にはある特徴がある。例えば、ゴリラが歌っていた名曲を相方が歌えばこんな感じになる。


「あ、優しさに触れることより振りまくことで。あ、ずっとずっと今までやってきた。あ、それでも損したなんて あ、思ってないから今夜も あ、なんとか自分で自分を守れ あ、wow wowwar wowwar tonight  あ、wow wowwar wowwar tonight」
 なんだか余計な一音が入るのだ。相方は歌が下手くそなわけではないが、その歌い方だとなんだか曲を馬鹿にしているように聞こえて仕方がない。


 気の弱いわたしにはそれを指摘する勇気もない。だけど、いつまでもそれを聞いている忍耐力もない。だから、今日のところは10曲もダウンロードすることも出来なかった。


 それでも相方のひとりカラオケは止まることをしらない。思いつく曲を勢いに乗って歌い続けている。もちろん、この人の独特の歌い方で。


 誰か助けてくれ。このままではわたしの頭に残っている名曲が全て相方バージョンに書き換えられてしまう。
 曲を聴けば思い出す美しいはずの思い出もなんだか馬鹿馬鹿しいものになってしまうのだ。

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