1月7日

 今日からやっといつも通りの日常に帰ることが出来るのだ。金がないのは相変わらずだけど。仕事が出来ることを有難いと思うなんて、そうそうあることじゃない。いつも休みたい休みたいと思っているのだが、今年の年末年始の連休は長すぎた。


 仕事が始まると言ってもわたしも相方も勤め人ではない。休むときだって仕事をするときだってこの部屋の中にいることには変わりはないのだ。


 わたしの仕事はものを書くことだ。エッセイとコラムの連載を月に1本ずつ持っている。だが、それは本来ならば相方の仕事なのだ。相方は少しだけ出版関係者との繋がりがある。それを活かしてエッセイとコラムを書く仕事をしているのだ。正確には知らないがおそらくそれぞれ月に2本ずつくらいではないか。
 そのうちエッセイとコラム1本ずつをわたしに書かせてくれるのだ。もちろん、依頼者は相方に仕事を依頼しているわけで、相方がわたしに仕事を任せてくれるだけだ。その報酬はわたしの手元に残ることになるが、わたしは相方の仕事のおこぼれをもらっているに過ぎない。私の書いた記事を最終的に相方がチェックして相方が書いたものとして依頼者に納品する。
 基本的には書く内容は自由とされているけれど、どうしても時事ネタなんかを書く機会が多くなる。だからわたしは毎日、全く面白いとは思わないニュース番組なんかを見なくてはならない。後は、暇さえさればネットを開いて世の中で今なにが流行っているのか、なにが話題になっているのかをチェックしなければならない。月初めの今日は今月分の記事の依頼がくる日だ。それらは全て相方の元にメールで届くのだが、今日来た依頼は「平成という時代を振り返る」というテーマの決められた記事だった。


「英奈。この記事頼むわ。」
 わたしは仕事を相方に廻してもらっている身だから仕事の選り好みなんか出来やしない。
それにしてもやっかいなテーマだな。わたしは平成生まれだけど別にこの時代を生きてきた、他の時代と比べてどうだったなんてことが書けるわけがない。こんなテーマはじじいが書くべきだと思った。


 ものを書くというのは意外と頭を使わなくてはならない。どんな口調で書けばいいのか、なにに向かってかけばいいのか、相手になにを伝えたいのか。笑わせたいのか、感心させたいのか。
 それ以前に今回は、どんな内容を書いたらいいのか全く頭に浮かばない。
 取り敢えずネットで平成という時代にどんな出来事があったのか調べてみようか。


 年末年始はたいして頭を使っていなかったから脳が錆びついている。ついでに感覚神経にも埃がついている。


 まあ、やっと退屈から逃れられたのだ。


 正月には全く考えもしなかったが仕事に手を付けて初めて、今年はどんなことが起きる年になるのだろうと期待も不安も頭に浮かび上がってきた。

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